【映画】世界にひとつのプレイブック
評価…★★★★★
シンプルだけれど、素晴らしい映画
とても良い映画でした。やはり人によって好みは当然違うので、同じ映画を見ても様々な意見が出てくるものです。ただ、この映画は、きっとほとんどの人が見終わった後に「いい映画だった」と思えるような作品だと思います。思ったよりもそういう映画ってあまりないですよね。
ものすごくざっくり言うと、妻の浮気が原因で精神のバランスを崩してしまった男と、事故で夫を亡くし心に傷を負った女が、ひょんなことからダンスの大会に出ることになる…というようなあらすじです。
序盤から、妻との関係は自分を高めることでやり直すことができると考えている主人公の行動や、かなりクレイジーなヒロインの行動、様々な脇役のあれこれに笑わせられました。しかし、主人公の行動から生まれる笑いなどは、精神的なトラウマから現実を見つめることができていないところからきており、実はかなり切なくもあります。
しかし、2人が二人三脚で前を向いていこうとする様子が心地よいペースで展開していき、ラストもすっきり、温かい気持ちになれるものです(終盤の盛り上げ方、締め方がとても好きです)。
役者ってすごい!
そうした一見シンプルだけどいい映画では、役者が作品の成否を決めるといってもいいのではないでしょうか。
この作品は、脇役も含めてキャストがぴったりはまっているように感じました。
特に、ヒロインを演じたジェニファー・ローレンスが素晴らしいです。
すごく変わっているのに、とてもキュートなヒロインがドはまりで、彼女の虜になってしまいました笑
映画だからこその魅力
この映画には原作があるそうです。最近は小説の実写化もたくさんありますが、個人的には映画でなくてもいいかな、と観終わった後に感じるものが多いです。
しかし、この作品には映画でなくてはならない理由、魅力が間違いなくあると思います。
そして、それは文章にはできてない類のものだと思うので、ぜひだまされたと思ってみてほしい、そんな作品です。
【小説】首折り男のための協奏曲
本屋に立ち寄った際、目に入ってしまったので買ってしまいました。
私は、小説は基本的に文庫版が出るまで待つ派なのですが、伊坂さんの作品の場合は文庫版を出すにあたり、かなり手を加えているので、その違いを楽しむためにハードカバーもほしくなってしまいます…
伊坂さんは協奏曲向き?
今回はもともと雑誌のために書いたいくつかの短編をまとめたものなのですが、その雑誌で単発のものとして読んだときと比べて、1つ1つの話から受ける印象はかなり違います。
まとめるにあたり、「首折り男」をうまく軸に据えながら再構成したから当然だといえば当然なのですが、伊坂さんはこうした短編のつなぎ方が絶妙で、まさに「協奏曲」の名に相応しい仕上がりです。
伊坂さんの長編作品も大好きなのですが、こうした短編の連作が伊坂さんらしさが最も生きていると思います。
珍しく普通の人が多い?
と個人的には感じました笑。
伊坂さんの作品は基本的に、「常識的な主人公+個性の強すぎる登場人物たち」で成り立っている作品が多いです。主人公からすると理解できない周りの人物によって無理やり巻き込まれ、そこでひと波乱ある…みたいな。
この奇想天外な登場人物たちを楽しむことができるかどうかが、伊坂さんの作品の好き嫌いの分かれ目になっているような気がします。
今回もそうした人物が全くいないわけではありません。今作では、首折り男がその役割を担っています(首折り男のかなり変化球の人助けエピソードがとても好きです)。
しかし!
他の作品と比べるとかなり少ないです。今回は、どの短編に出てくる登場人物も、比較的まともというか、何をしでかすかわからない人はあまり登場しません。いつもならばそれでもかというくらい登場してくるのに!笑
だからなのか、そこまで奇想天外なラストではなく、比較的穏やかな終わり方をします。しかし、それが悪いというわけではなく、心地よい余韻をどの話も残してくれます。
おわりに
この作品は伊坂作品が大好きな人にも、あまり好みではないという人にもお勧めできる作風に仕上がっていると思います。た作品とのリンクにニヤニヤでき、ネタバレになってしまうので書きませんが、かなり意欲的な技法にもチャレンジしていて驚かされます。
個人的には、一番最後の「合コンの話」が一押しです。私は今まで合コンというものに参加したことがないのですが、こんな合コンなら参加してみたいと思いました。
それでは!