【小説】首折り男のための協奏曲
本屋に立ち寄った際、目に入ってしまったので買ってしまいました。
私は、小説は基本的に文庫版が出るまで待つ派なのですが、伊坂さんの作品の場合は文庫版を出すにあたり、かなり手を加えているので、その違いを楽しむためにハードカバーもほしくなってしまいます…
伊坂さんは協奏曲向き?
今回はもともと雑誌のために書いたいくつかの短編をまとめたものなのですが、その雑誌で単発のものとして読んだときと比べて、1つ1つの話から受ける印象はかなり違います。
まとめるにあたり、「首折り男」をうまく軸に据えながら再構成したから当然だといえば当然なのですが、伊坂さんはこうした短編のつなぎ方が絶妙で、まさに「協奏曲」の名に相応しい仕上がりです。
伊坂さんの長編作品も大好きなのですが、こうした短編の連作が伊坂さんらしさが最も生きていると思います。
珍しく普通の人が多い?
と個人的には感じました笑。
伊坂さんの作品は基本的に、「常識的な主人公+個性の強すぎる登場人物たち」で成り立っている作品が多いです。主人公からすると理解できない周りの人物によって無理やり巻き込まれ、そこでひと波乱ある…みたいな。
この奇想天外な登場人物たちを楽しむことができるかどうかが、伊坂さんの作品の好き嫌いの分かれ目になっているような気がします。
今回もそうした人物が全くいないわけではありません。今作では、首折り男がその役割を担っています(首折り男のかなり変化球の人助けエピソードがとても好きです)。
しかし!
他の作品と比べるとかなり少ないです。今回は、どの短編に出てくる登場人物も、比較的まともというか、何をしでかすかわからない人はあまり登場しません。いつもならばそれでもかというくらい登場してくるのに!笑
だからなのか、そこまで奇想天外なラストではなく、比較的穏やかな終わり方をします。しかし、それが悪いというわけではなく、心地よい余韻をどの話も残してくれます。
おわりに
この作品は伊坂作品が大好きな人にも、あまり好みではないという人にもお勧めできる作風に仕上がっていると思います。た作品とのリンクにニヤニヤでき、ネタバレになってしまうので書きませんが、かなり意欲的な技法にもチャレンジしていて驚かされます。
個人的には、一番最後の「合コンの話」が一押しです。私は今まで合コンというものに参加したことがないのですが、こんな合コンなら参加してみたいと思いました。
それでは!